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安心・安全への取り組み

トランス脂肪酸低減について

2018年11月
日本マーガリン工業会

 食品中に含有されるトランス脂肪酸の摂取に関連して、当工業会は、トランス脂肪酸に関する見解をこれまでも明らかにして参りましたが、2012年3月には、食品安全委員会が食品に含まれるトランス脂肪酸の健康影響評価(リスク評価)の結果を公表し、また、2018年3月には、農林水産省が平成26・27年度に行った食品中のトランス脂肪酸の含有実態調査結果を公表しました。それらを踏まえ、改めて当工業会のトランス脂肪酸の低減の取り組みについて申し述べます。

1. 食品中のトランス脂肪酸について
脂肪酸には、炭素間の二重結合がない飽和脂肪酸と炭素間の二重結合がある不飽和脂肪酸の2種類があります。さらに、不飽和脂肪酸には、炭素間の二重結合のまわりの構造の違いによってシス型とトランス型があり、このトランス型の二重結合が一つ以上ある不飽和脂肪酸をまとめてトランス脂肪酸と呼んでいます。
 食品中のトランス脂肪酸には、天然の食品に含まれているものと、油脂を加工する過程でできるものがあります。天然の食品中のトランス脂肪酸としては、牛、羊、山羊等反芻動物の肉や乳、その加工品に含まれるものが挙げられます。これは、反芻動物の胃の中に存在する微生物が不飽和脂肪酸中のシス型二重結合の一部をトランス型に変化させることで生成します。
 一方、油脂の加工工程でできるトランス脂肪酸としては、部分水素添加油脂(PHOs)に含まれるものが挙げられます。水素添加とは油脂中の不飽和脂肪酸の二重結合に水素を付加し単結合に変換することで、常温で液体の油を半固体や個体の油脂に作り替える技術です。そして、油脂中の不飽和脂肪酸の二重結合の一部を残すように水素添加(部分水素添加)した油脂を部分水素添加油と呼びます。部分水素添加油中に残る二重結合が水素添加過程でトランス型に変化することで、トランス脂肪酸が生成します。なお、二重結合が残らないようほぼ完全に水素添加(完全水素添加)を行ってできる油脂を極度硬化油と呼びます。この場合は、水素添加を行ってもトランス脂肪酸は生成しません。

2.トランス脂肪酸の健康への影響
 トランス脂肪酸の長年にわたる過剰摂取は、血液中のDLコレステロール(悪玉コレステロール)を増やすだけでなく、HDLコレステロール(善玉コレステロール)を減らし、冠動脈性心疾患のリスクを増加させるという研究結果が報告されています。
 FAO/WHO合同専門家会合の暫定報告書(2010年)では、トランス脂肪酸の摂取量を反芻動物由来のものと油脂の加工工程由来のものを合わせて総エネルギー摂取量の1%未満とする目標値を設定しています。
 そして、欧州食品安全機関(EFSA)の「食品中のトランス脂肪酸のヒトへの健康影響に関する意見書」(2004年)の中で、反芻動物由来と水素添加植物油脂由来で影響に違いがあるかどうか決定することは不可能である、と述べています。
 また、天然の食品に含まれているトランス脂肪酸と油脂を加工する工程でできるトランス脂肪酸を区別できる分析方法は、現時点ではありません。

3.トランス脂肪酸摂取の現状
 食品安全委員会の資料「脂質の摂取 ~トランス脂肪酸を理解するために~」(2018年5月)によれば、各国のトランス脂肪酸摂取量の平均値は、日本が総エネルギー比で0.31%(2006年及び2008年調査)であるのに対し、米国が1.1%(2009年~2010年調査)、カナダが1.42%(2008年調査)になっていて、WHOの目標値(1%未満)を超えています。
 そうした中、2015年6月には、米国食品医薬品庁(FDA)は、トランス脂肪酸が多く含まれる部分水素添加油脂(PHOs)は、従来から使われており安全が確保されている物質 (GRAS)ではないとして、3年後から食品に使用するためにはFDAの承認が新たに必要と決定し、2018年6月から適用を開始しました。
 2012年3月に食品安全委員会が取りまとめた食品健康影響評価においては、「日本人の大多数がWHOの勧告(目標)基準であるエネルギー比1%未満であり、また、健康への影響を評価できるレベルを下回っていることから、通常の生活では健康への影響は小さいと考えられる」と評価しています。

4.トランス脂肪酸の低減に向けて
 私たち日本マーガリン工業会会員企業は、油脂中に含まれるトランス脂肪酸の低減に取り組んで参りました。その結果、製品の品質を保ちつつ、エステル交換や分別の技術を活用して部分水素添加油をできる限り使わないことによって、トランス脂肪酸を提言することに成功しています。これは、下表に示した農林水産省が平成18・19年度と平静26・27年度に行った調査結果からも明らかです。また、この平成26・27年度の調査結果の数値は平成18・19年度に行ったバターの調査結果の数値も下回っています。これからも私たちは皆さまの豊かな食生活のために、安全、安心な製品づくりに取り組んで参ります。


表.農林水産省によるトランス脂肪酸含有量の調査結果
  平成18・19年度
中央値(g/食品100g)
平成26・27年度
中央値(g/食品100g)
マーガリン 20品目 8.7 46品目 0.99
ファットスプレッド 14品目 6.1 33品目 0.69
ショートニング 10品目 12 24品目 1.0
(農林水産省 平成18・19年度調査結果及び平成26・27年度調査結果より)