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飛天

平成10年 「Run to The Daylight(目標に向かって突っ走れ)」

- 飛  天 -
(平成10年度事業発展計画書より)

 昨今、日本経済は最悪の環境にあると言われる。株価は下落したまま回復せず、為替は1ドル180円の可能性ありと書かれる。株式金融システムは混乱を極め、企業倒産件数は 史上2位。アジア全域の国家経済も沈没寸前で、輝く21世紀を演出するはずの行財政大改革も全く進展を感じさせない。
 しかし、これは何かおかしい。現在、日本の国内総生産(GDP)は500兆円を超える。 これは、独、英、仏の3ヶ国(人口1イ意9700万人)を合わせた金額よりも大きく、失業率は、今もなお世界最低レベルの3%前後で推移している。新しい超大国の地位を獲得しつつある中国のGDPは70兆円で、経済危機の韓国は50兆円しかない。参考に挙げると、台湾30兆円、タイ20兆円、マレーシア10兆円、シンガポール10兆円程度である。日本が海外で生産している金額だけでも45兆円ある。米国は人口2億6400万人で800兆円だ。
 英国の科学雑誌「ネイチャー」によると、一昨年の世界中の遺伝子関連特許(21世紀に最も花開く技術の一つと言われている)の取得数上位13社中6社が日本企業であった。同年の米国での総特許取得件数上位10社中8社が日本企業だ(1位はIBM)。次世代エネルギーのチャンピオンは重水素(原料は水)を燃料とする核融合であるが、この世界最大規模のプロジェクトが茨城県の東海村で進行している。予算規模6000億円で4ヶ国から30名の研究者が家族とともに常駐し外国人村が出来ている。本年核融合の実験が行なわれる予定だが、実用の検証炉の設置場所としてすでに数ヶ所の町村が誘致運動に動き初めている。核融合に成功すれば、燃料は海からとれる重水素だから、ほとんど無限にエネルギーを取り出すことが出来る。
 これだけ経済科学活動の規模が巨大で、広範囲の分野で多くの研究成果を生んでいる国は、世界中で米国以外、日本しか存在しない。
 世界地図の中で、東アジアの片隅に弓なりにある小っぽけな島国日本。資源のほとんど を海外からの輸入に頼り、世界に通用しない特異な単一言語「日本語」を使う商売のへ夕な日本人。そして世界最古の全体長編小説「源氏物語」(西暦1000年)を創り今日に伝えるナイーブで内気な国民性。(「千夜一夜物語」1200年、「三国志演義」1300年、「ダンテの神曲」1300年、「ドンキホーテ」1600年)
 ユダヤ、インド、華僑やアラブの商売人にはとても及ばないから団結心をたかめ、資源がないから世界一の教育立国を築き、狭い国土と四季折々の気候が器用な手先と繊細な感受性や『あうん』の呼吸をはぐくんでくれたのだろうか。
 ともあれ、日本はすごいのである。

 事業の繁栄発展の究極は、たった二つのコンセプトから成り立っている。
 一つは成長拡大させること。もう一つは、安定させることである。この二つの哲理を同時に戦略課題とし、実行して、はじめて繁栄発展が起こる。二つのうち、どちらかの一つが欠けても事業の繁栄発展はあり得ない。

 事業の『成長拡大』とは、どんなに経済環境が悪化していても、前年よりもお客様の数を増やすことだ。前年よりも売価の高いもの、粗利益の高い新製品を開発し、お客様に新鮮な驚きを与え、数多く買って頂くことである。これ以外の成長拡大はあり得ない。 
 私達はお客様を増やすために、新規訪問をくり返し、商品説明会を行い、同行訪問をお願いし、紹介を頼り、同業他社の製品を、サービスを調べ、我社の製品のサービス向上に努め、お客様が感動する新製品を開発し、生産効率を上げ、他社と全ゆる方向で優位の差別化を目指さなければ拡大できない。
 事業の『安定』とは、自分の会社で売っているものが何であっても、商品であっても、サービスであっても、形があっても無くても、その売りものを、同じお客様が、くり返し、くり返し、くり返し買っていただくことである。これ以外の安定はない。
 だからこそ、私達は徹底的にお客様第一主義を貫き、お客様のもとへおとずれ、人間性を可愛がって頂き、品質を高め、納期を早め、企画力を磨き上げなければならない。誠意溢れたクレーム処理対応をしなければならない。同じお客様が、くり返し、くり返し、くり返し発注される要素を、他社よりはるかに秀れたものにすることこそが、私達に課せられた安定の大テーマである。
 
 私達の携わっている食品事業は、バブル経済はもとより、家電・電子業界や情報、通信、自動車、住宅産業と比べても、限りなく地道で保守的な産業だ。おふくろの味つけを好む性向は、かって食べたことのない食品の出現を阻み、ファッションや趣味に比べて、生涯最も変わることの少ない嗜好性と言われている。
 しかし、ひとたびお客様に我社の商品を注文していただければ、それを縁に、何回でも、幾年も変わらぬお取引をして頂ける。実に恵まれた事業でもある。
 お客様との長い信頼関係を、われわれの努力で築いていける。五年でも、十年でも、五十年でも、百年でも、限りない長い信頼関係を築いていけるのである。

 我社のガーリックマーガリンが躍進を初めた。昨年3月の山口生協での数字は最初信じられなかったし、昨秋、北関東の生協のバイヤーは「お化け」商品と呼び、単協の売上げ減少に歯止めをかけた功績に感謝を表明された。家庭用マーガリンのポスデータランキング表に昨10月登場し、11月単月は24位に上昇した。1位は雪印乳業のネオソフトで2位日本リーバのラーマソフト、3位雪印のハーフスプレッド、4位明治乳業のコーンソフト、5位雪印べに花スプレッドで30位以内に上記各社以外、13位に「帝国ホテル」、17位に「キリン小岩井」、20位に「創健社べに花」が登場しているだけである。味の素は数年前に家庭用市場から撤退した。いずれも1000億円レベルのメジャー企業のみである。日本マーガリンエ業会に所属する25社は、最大手のミヨシ油脂を含めて上記以外家庭用マーガリンヘの参入を事実上放棄している。工業会メンバーの中で最弱者に近いマリンフードが成功すれば奇跡に近い。現在、奇跡を起こしつつある。
 年が明けハーブ&ガーリックモツァレラミックスチーズを開発し、量販店に紹介を初めた。設定売価は、多分、国内最高値(と言うことは世界最高値)である。バイヤーの一人が次の言葉を言った。「銅板焼ホットケーキ、おはようパンケーキなども含め、次々に提案される商品の開発コンセプトに興味があり、紹介してもらって楽しい」。

 私達は、全くの偶然に、運命の悪戯から、同時代に生まれ、マリンフードに働いている。食品産業に従事している。
 環境の激変に耐え、激しい競争に生き残り、目標にチャレンジし、売上や利益が順調であり続ける事ほど、企業やその社員にとって幸福なことはない。『強い会社』のキーワードである①コア・コンピタンス(核の力)②カスタマーフォーカス(顧客重視)③スピード(速さ)を武器に、未来につながるナイスカンパニーを創り上げることが出来れば、その原動力となることが出来れば、偶然に入った会社、偶然に出会った運命の中で、一回きりの私達の人生が、どんなに輝いたものになるだろう。

 「人間は誰でも、本来、何事をも、自分が深く思い、考えた通りに成すことが出来る。自分がもし出来ないと思えば何事も出来ないし、出来ると信念すれば、何事をもなすことが出来る。つまり、すべてが、自分が自分自身に課した信念のとおりになる」(中村天風「成功の実現」)

 今年で事業発展計画発表会は12回を数えると同時に30年事業計画の3分の1の節目の年を迎える。この間の成果は、売上利益目標を達成することなく、まるで遅々とだらだら坂を登る歩みであった。しかし、本田宗一郎氏は次のように言っている。「俺はこれまでー回も失敗というのを経験したことがない。成功するまであきらめずに続けたからだ」。
 私は今ふたたび、精魂こめて、お客様に対する考え方、あらゆるサービスの姿勢、心、信念する経営思想を書く。全社員とその家族が、気力を漲らせ、豊かで、明るい生活を営むために遂行しなければならない必達の利益が明示してあり、それを実現するすべての戦略、方針、構想、実行手段が網羅されている。
 今年の事業計画の基本方針の第一は、マネジメント・バイ・ワンダリング・アラウンド(経営は歩き回りながら)である。
 私は大いなる願望(マリンドリーム)達成に向い、ひたすら精進し、方向を決定し、理念を固め、誠意をもって、情熱あふれる経営を推進することを、天から課せられた使命だと考え、実行する。

平成10年1月31日
取締役社長 吉 村 直 樹