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飛天

平成11年 「BIG DRIVE(スター誕生)」

- 飛  天 -
(平成11年度事業発展計画書より)

 阪神大震災から4年が経過した。当時の混乱が、今も昨日のように鮮明に思い出される。港湾は破壊され、鉄道は神戸を通る全ての線路が断線。高速道路が倒壊し、一般の道路という道路は生活物資を輸送する大型トラックなどで、深夜まで大渋滞が続いていた。マリンフードでも、約3ヶ月にわたり毎夜会議室のホワイトボードで原材料の手当やら、製品の配送に悪戦苦闘した。神戸港から入る予定の原料は全て横浜や名古屋に変更になったが、アクセスがズタズタで、一度日本海沿岸まで走り最後に南下するという有り様だ。いつ着くか誰にもわからない。
 震災から数日後の瓦傑と化した神戸の街中で、しかし人々は意外に元気だった。ボランティアの活気もさることながら「いやあ~、おまえ生きてたか。わしは全て失ってしまったわ。はっはっは」という光景に何度も出くわした。「ゼロからやり直しや。」不思議な光景だったが誰もがそれを当たり前のこととして受けとめている様子なのが、もっと不思議だったかもしれない。

 さて日本経済の現況は、公的金融機関の相次ぐ崩壊や記録的な失業率、回復する兆しの見えない一般消費動向に加え、アジア全域の国家経済も青息吐息で、まさに世紀末の様相を呈している。帝国データバンクによると、昨年の倒産企業の負債総額は14兆3812億円と戦後最悪を記録した。そのうち4割は金融機関による貸し渋りだ。建設、商社、流通などの構造不況業種だけにとどまらず、次代を担うベンチャー企業の破綻も急増している。
 一方、ヨーロッパのユーロヘの通貨統合に象徴されるように、世界経済のグローバル化やボーダレス化の波は、とどめようもなく進展している。日産自動車や日立、ダイエーと言った日本を代表するスーパーカンパニーでさえ、世界市場再編の嵐が初まれば、明日はどうなるかわからない。まさに大競争時代の到来である。
 企業は新たな競争の時代を迎えた。国内、海外双方で進む構造変化のうねりが、日本企業のいままでの競争条件を大きく変えようとしている。国内の過去と決別を模索する新意識革命、米国新資本主義の躍進、欧州の統合、中国の野望。遺伝子や情報通信関連産業の急激な変化、成長、拡大。
 この新たな『大競争時代』に、企業が競争力を保ち続け、生き残り、次の成長をつかむためには一体何が必要なのだろうか。

 1、コア・コンピタンス(核の力)
 2、カスタマー・フォーカス(お客様第一主義)
 3、スピード(速さ)
 我々の会社にとって、"核"となる力がどこにあるのか。何か自分の本業であり、自分がどの分野で戦うべきかを知り、そこへ経営資源を集中する。いくら企業の規模が大きくても、コア・コンピタンスを見極めないまま事業をやみくもに拡大したところで勝算はない。世界の波の中で沈む。中小企業だから大企業に負けるのではない。自らが勝負できる分野を見定めぬまま事業を展開するから、大企業に負ける。
 市場で戦うにはお客様の嗜好が欠かせない。常に揺れ動く激しい変化の時代に信じられる唯一の確実な指標こそ、お客様なのである。お客様の本当のニーズ、期待、不満を読み取り、新たな製品、サービスを市場に送り出す。
 お客様とともに変化の時代を乗り切って行く時、不可欠なのはスピードである。市場の変化は、実に素早くダイナミックだ。絶えず変化する世界では、じっとしていることは危険である。間違った決断をしても、素早く修正すれば、ダメージを最小限に抑えることが出来る。変化が激しい世界では、今日正しかったことが、明日も正しいとは限らない。そうした不確実な世界での競争に生き残り、成長市場に地歩を固めるためには、企業も変わり続けるしかない。

 GE(ジェネラル・エレクトロニック)社のジャック・ウェルチ会長は、「20世紀最高の経営者」と評価され初めている。ウェルチ会長がトップに立った過去17年間で、GEの株式時価総額は1兆5千億円から40兆円になった。
 「ウェルチはGEをよく『八百屋』にたとえる。 GEのような巨大企業のたとえにしてはいかにも奇妙だが、こうした言葉を使うことで、ウェルチは腕まくりをして前掛けをかけ、レジの後ろに立つような気分を味わえる。またこうした意識をもてば、社員一人ひとりについて理解し、客一人ひとりをもてなすことができるというのだ。『野菜を売るのも、エンジンや医療機器を売るのも、心掛けは同じだ。お客様に納得してもらえなかったら、商品が古くなったら、商品の配置が間違っていたら、あるいは値段が間違っていたら......。どの場合も同じだ。小さな組織のつもりで経営すればいい。売る物に何ケタの値段がついていようと関係ない』とウェルチは言う。
 ウェルチは、ビジネスにおける効率の追求には限界がないと信じている。この信念は、人間の創造性には限界がないという彼の信念に裏付けられている。『人間の精神から生まれるアイデアは、汲めども尽きぬ井戸のようなものだ。だから、汲み出すだけでいい。"効率"という表現はよくない。"創造性"という言葉を使うべきだ。これは、人間を貴いと信ずることでもある』とウェルチは断言する。
 ウェルチは幹部候補者全員に、次のような才能を求める。膨大な人間的パワーと他の人の意欲をわきたててエネルギーを与える力という意味の"エッジ"(強み。生まれつきの勝負強さを表すGE社内での表現)、そしてこうした才能を現実に生かせる能力だ。ウェルチはまた、能力の低い社員を排除するよう責任者たちに圧力をかける。『ウェルチが無能な人間を許容することはない。この点だけは間違いない』と取締役ガートルード・マイケルソンは言う。
 GEのクロトン・オン・ハドソンにある研修センターで、ウェルチの講義を受けたある生徒は『後光のさしている神のような人物を想像していたが、実際はまるで祖父と話しているような感じだ。彼と一緒にいると落ち着く。こんな気さくな人物だとは思いもしなかった』と言う。『人生が選べるものだったなら、ゴルフ選手になりたかった。だが、何か商売をしなければならないとしたら、今の仕事は、神が創造した最高の仕事だ。毎日が新しいことの連続だ。製品相手でなく、人間相手の仕事だからだ。とても刺激的だ』」(ビジネスウィーク詰1998年6月8日号)

 事業の繁栄発展の究極は、たった二つのコンセプトから成り立っている。
 一つは成長拡大させること。もう一つは、安定させることである。この二つの哲理を同時に戦略課題とし、実行して初めて繁栄発展が起こる。二つのうち、どちらかの一つが欠けても事業の繁栄発展はあり得ない。

 私達の携わっている食品事業は、バブル経済はもとより、家電・電子業界や情報、通信、自動車、アパレル、住宅産業と比べても、限りなく地道で保守的な産業だ。おふくろの味つけを好む性向は、かつて食べたことのない食品の出現を阻み、ファッションや趣味に比べて、生涯最も変わることの少ない嗜好性だと言われている。
 しかし、ひとたびお客様に我社の商品を注文していただければ、それを縁に、何回でも、幾年も変わらぬお取引をして頂ける。実に恵まれた事業でもある。
 お客様との長い信頼関係を、われわれの努力で築いていける。五年でも、十年でも、五十年でも、百年でも、限りない長い信頼関係を築いていけるのである。

 競合メーカーの幹部がパーティーの席上で、「ガーリックマーガリンは御社の独壇上ですね。素晴しいすき間市場を開拓された。敵はいないじゃないですか」と囁いた。外資系食品企業の会長が「吉村さんの発表した『100年後のチーズ需要』を新聞で読みましたよ」と近づいて来て「家内が御社のガーリックマーガリンの大ファンですよ」と告白してくれた。テレビ朝日で浜村淳が、当社のオリーブ&ガーリックマーガリンについて「香りが素晴しい。こんなに美味しいものだとは思わなかった」と激賞してくれた。イトーヨーカ堂のバイヤーが銅版焼ホットケーキについて「こういう付加価値のある製品を他のメーカーも開発してください」と宣伝してくれた。日経流通新聞が、ガーリックライスの「味」を評価してくれた。雪印アクセスの営業マンが「マリンフードは素晴しい商品を持っている。あとはいかにプレゼンテーションするかだけだ」と感心してくれた。

 「人間は誰でも、本来、何事をも自分が深く思い、考えた通りに成すことが出来る。自分がもし出来ないと思えば何事も出来ないし、出来ると信念すれば、何事もなすことが出来る。つまり、すべてが自分が自分自身に課した信念のとおりになる」(中村天風「成功の実現」)

 今年で事業発展計画発表会は13回を数える。この間の成果は、売上利益目標を達成することなく、まるで遅々とだらだら坂を登る歩みであった。しかし、本田宗一郎氏は次のように言っている。「俺はこれまで一回も失敗というのを経験したことがない。成功するまであきらめずに続けたからだ」。敬愛する日本経営合理化協会の牟田学理事長の最新刊「オーナー社長業」の中で「吉村社長は見事な状況判断である。実行力も優れている」と過分な言葉を頂戴し激励していただいた。
 私は今ふたたび、精魂こめて、お客様に対する考え方、あらゆるサービスの姿勢、心、信念する経営思想を書く。全社員とその家族が、気力を漲らせ、豊かで、明るい生活を営むために遂行しなければならない必達の利益が明示してあり、それを実現するすべての戦略、方針、構想、実行手段が網羅されている。
 今年の事業計画の基本方針の第一は「財務体質強化元年として目標利益を必達する」
である。
 私は大いなる願望(マリンドリーム)達成に向い、ひたすら精進し、方向を決定し、理念を固め、誠意をもって、情熱あふれる経営を推進することを、天から課せられた使命だと考え、実行する。

平成11年1月30日
取締役社長 吉 村 直 樹