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飛天

平成12年 「戴冠の時(新千年紀への旅立ち)」

- 飛  天 -
(平成12年度事業発展計画書より)

「私は40年近く以前に豊南小学校を卒業し、現在近隣で事業を営む者です。このたび縁あって、幾許かの寄附を申し入れましたところ、心良くお受けいただきました。また、お忙しいところ先生方には寄贈品の選定までお願いし、後々まで残る素敵な品目を選んでいただきました。ありがとうございます。
 その中でもたくさんの図書の購入は、私にとって特にうれしいものです。豊南小学校在学中には、週末になると学校の図書を借り出し、土曜日の午後、むさぼるように"ロビンソンクルーソー"や"ああ無情""海底2万マイル"など、たくさんの本を読んだ思い出は、今も鮮明に覚えています。
 奇しくも今年の夏、私ども在学中の6年1組の同窓会が、豊中で行われました。参加者は15名でちょっと残念でしたが、遠くは横浜や滋賀からも駆け付けてくれました。私達全員が50歳を迎えるということで、とても楽しい集まりになりました。当時担任だった渡辺一郎先生もお元気に参加され、カラオケも聞かせていただきました。
 昔に比べると、とても豊かな時代になったと思います。でも、1日24時間は変わりません。一刻一刻を充実して過ごして下さい。間違いなく新しい時代の主人公は皆さんたちです。先生方には、そのための指導をくれぐれもよろしくお願いいたします。
 来年から、新しい千年紀がスタートします。やさしい心と強い意志を持って、2000年に向かって行って下さい。"ニュー ミレニアム イズ カミング"です。皆さん方の御健闘を心より期待しています。     1999年12月24日
豊南町の一事業家より」

 400年前のスペインの作家セルバンテスが書いた『ドン・キホーテ』という作品がある。痩馬にまたがり、騎士道を信じ、風車に向って突進するドン・キホーテの物語が語り伝えられるのは、その夢が非常識なものであるにかかわらず、あくまで美しいからである。 600年前、世阿弥は『花伝の書』を著わし「舞は能を源としているが、その舞には花がなければならない」ことを伝えている。

 紀元元年、ヨーロッパはオクタビアヌス帝の支配するローマ帝国の最盛期。中国は前漢末期、三国志の時代はこの直後。日本は弥生時代半ばで、邪馬台国の卑弥呼の登場はまだ200年を待たなければならない。紀元1000年にヨーロッパは神聖ローマ帝国成立の直後でローマンカトリック教会が躍進し中世の騎士が主役で、アメリカ大陸はマヤ文明である。中国は宋の時代で科挙が確立し官僚支配が初まった。日本は平安時代で藤原氏が栄華を誇り、源氏物語がうまれた。

 今、紀元2000年がスタートした。過去1000年の時代の移り変わりは、実に雄大でダイナミックだ。 1000年前、地球環境の保護とかクローン人間の可能性など想像の世界でもあり得なかった。飛行機、自動車、テレビ、ロケットなどの発明と普及は全てわずかこの100年以内の出来事だ。パソコン、携帯電話、インターネット、遺伝子組み換えなどは、なんとこの10年以内の話題である。
 今、世界はかって人類の歴史が経験したことのないスピードで、グローバル化やボーダレス化、情報革命、生命科学革命が進展している。これだけ変化の激しい世界では、今日正しかったことが、明日も正しいとは限らない。
 企業は新たな競争の時代を迎えた。国内、海外双方で進む構造変化のうねりが、日本企業のいままでの競争条件を大きく変えようとしている。国内の過去と決別を模索する新意識革命、米国新資本主義の躍進、欧州の統合、中国の野望。この流動的で不確実な世界の競争に生き残り、成長市場に地歩を固めるためには、企業も変わり続けるしかない。

 事業の繁栄発展の究極は、たった二つのコンセプトから成り立っている。
 ―つは成長拡大させること。もう一つは、安定させることである。この二つの哲理を同時に戦略課題とし、実行して初めて繁栄発展が起こる。二つのうち、どちらかのーつが欠けても事業の繁栄発展はあり得ない。

 事業の『成長拡大』とは、どんなに経済環境が悪化していても、前年よりもお客様の数を増やすことだ。前年よりも売価の高いもの、粗利益の高い新製品を開発し、お客様に新鮮な驚きを与え、数多く買って頂くことである。これ以外の成長拡大はあり得ない。
 私達はお客様を増やすために、新規訪問をくり返し、商品説明会を行い、同行訪問をお願いし、紹介を頼り、同業他社の製品を、サービスを調べ、我社の製品のサービス向上に努め、お客様が感動する新製品を開発し、生産効率を上げ、他社と全ゆる方向で優位の差別化を目指さなければ拡大できない。
 事業の『安定』とは、自分の会社で売っているものが何であっても、商品であっても、サービスであっても、形があっても無くても、その売りものを、同じお客様が、くり返し、くり返し、くり返し買っていただくことである。これ以外の安定はない。
 だからこそ、私達は徹底的にお客様第一主義を貫き、お客様のもとへおとずれ、人間性を可愛がって頂き、品質を高め、納期を早め、企画力を磨き上げなければならない。誠意溢れたクレーム処理対応や電話応待をしなければならない。同じお客様が、くり返し、くり返し、くり返し発注される要素を、他社よりはるかに秀れたものにすることこそが、私達に課せられた安定の大テーマである。

 そしてこの新たな『大競争時代』に企業が競争力を保ち続け、生き残り、次の成長をつかむために必要な大方針とは、
 1.コア・コンピタンス(核の力)
 2.カスタマー・フォーカス(お客様第一主義)
 3.スピード(素早さ)
 4.マネジメント・バイ・ワンダリング・アラウンド(経営は歩き回りながら)

 私達は、宇宙の悠久の歴史の中で、全くの偶然に、運命の悪戯から、同時代に生まれ、マリンフードに働いている。食品産業に従事している。
 食品事業は、バブル経済はもとより、家電・電子業界や情報、通信、自動車、アパレル、住宅産業と比べても、限りなく地道で保守的な産業だ。おふくろの味つけを好む性向は、かって食べたことのない食品の出現を阻み、ファッションや趣味に比べて、生涯最も変わることの少ない嗜好性だと言われている。しかし、ひとたびお客様に我社の商品を注文していただければ、それを縁に何回でも幾年も変わらぬお取引をして頂ける。実に恵まれた事業でもある。

環境の激変に耐え、激しい競争に生き残り、目標にチャレンジし、売上や利益が順調であり続ける事ほど企業やその社員にとって幸福なことはない。そんな会社を、未来につながるナイスカンパニー、エクセレントカンパニーを創り上げることが出来れば、その原動力となることが出来れば、偶然に入った会社、偶然に出会った運命の中で、一回きりの私達の人生が、どんなに輝いたものになるだろう。
今年の初出の日の年始式で、一人の社員が"祝い船"の替え歌を作って歌った。
  1.今日はマリンの年始式
    社員一同集まって"力合わせて頑張るぞ"
    誓い心に今年の船出
    どんとこぎ出す マリン丸
  2.札幌、仙台、東京支店
    名古屋、広島、福岡と"今日は揃って初出の日"
    通うところは違っても
    心ひとつの マリン丸
  3.今は小さいマリンでも
    やがてでっかい船になる"事故をなくして頑張って"
    仕事よくして幸せつかみ
    明日に向かおう マリン丸

「人間は誰でも、本来、何事をも、自分が深く思い、考えたとおりに成すことができる。自分が、もし出来ないと思えば何事も出来ないし、出来ると信念すれば、何事をもなすことが出来る。つまり、すべてが自分が自分自身に課した信念のとおりになる」
(中村天風「成功の実現」)

 この事業発展計画書は、私か精魂こめて書きあげた、お客様に対する考え方、あらゆるサービスの姿勢、心、信念する経営思想をまとめたものである。
 全社員とその家族が、豊かで、明るい生活を営むために遂行しなければならない必達の売上、必達の利益が明示してあり、それを実現するすべての戦略、方針、構想、実行手段が網羅されている。
 私は、この必達の売上、利益確保のために、お客様第一主義を採り、競争力を強化し、新しい市場開拓を行い、情熱あふれる経営を推進することを、天から課せられた使命だと考え、実行する。

平成12年1月29日
取締役社長 吉村直樹