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飛天

平成17年 「風に立つ獅子」

- 飛  天 -
(平成17年度事業発展計画書より)

「世界中がこの海戦(日露戦争の日本海海戦)のなりゆきを見まもっていた。英国の雑誌には日露海戦がいかに注目すべき世界史的事件になるかを論じている。『その影響するところのものは史上かつてない大きさになるだろう』と言い、『近代的艦隊が、たがいに全滅を賭してたたかう決戦』と規定している。
......敵艦隊見ゆの報が伝わり、作戦参謀である(秋山)真之がいまただちにやらねばならぬことがあった。大本営に電報をうつことである。
......飯田少佐が真之のところへやって来て、草稿をさし出した。
『敵艦見ユトノ警報二接シ、聯合艦隊ハ直二出動、之ヲ撃滅セントス』とあった。『よろしい』真之はうなずいた。飯田は加藤参謀長のもとに駆け出そうとした。そのとき真之は『待て』ととめた。すでに鉛筆をにぎっていた。草稿をとりもどすと、上の文章につづいて、『本日天気晴朗ナレドモ浪高シ』と入れた。
......日本海海戦は、幕末から明治初年にかけての革命政治家である木戸孝允が言いつづけた『き癸ちゅう丑こう甲いん寅(ペリー来港の年)以来』という歴史のエポックの一大完成現象というべきものであった。日本は国際環境の苛烈ななかに入り、存亡の危機をさけんで志士たちがむらがって輩出し、一方、幕府も諸藩も江戸期科学の伝統に西洋科学を熔接し、ついに明治維新の成立とともに、世界史上の奇蹟といわれる近代国家を成立させた。......あらゆる意味で、この瞬間の海戦は癸丑甲寅以来のエネルギーの頂点であり、さらにいえば、2つの国が世界の最高水準の海軍の全力をあげて一定水域で決戦するという例は、近代世界史上唯一の事例で、以後もその例を見ない。......すでに戦闘の開始は、分秒をかぞえるまでにせまっている。真之が許可を乞うと、東郷(大将)はうなずいた。『皇国の興廃、此の一戦に在り。各員―層奮励努力せよ』。各艦とも、この信号文がすぐさま肉声にかわり、伝声管を通じて全員の耳に伝わった。......『連合艦隊』が解散した12月20日の解散式で東郷は(真之の起草した)告別の辞を読んだ。
 『百発百中の一砲、能く百発一中の敵砲百門に対抗しうるを覚うば、我等軍人は主として武力を形而上に求めざるべからず。惟うに武人の一生は連綿不断の戦争にして、事有れば武力を発揮し、事無ければこれを修養し、終始一貫その本分を尽さんのみ。......神明はただ平素の鍛練に努め戦わずしてすでに勝てる者に勝利の栄冠を授くると同時に、一勝に満足して治平安ずる者よりただちにこれをうばう。古人曰く、勝って兜の緒を締めよ、と』
 この文章はさまざまの形式で各国語に翻訳されたが、とくに米国大統領のセオドル・ルーズベルトはこれに感動し、全文を翻訳させて自国の陸海軍に配布した」。(司馬遼太郎作『坂の上の雲』)

 事業の繁栄発展の究極は、たった二つのコンセプトから成り立っている。
 ―つは成長拡大させること。もう一つは、安定させることである。この二つの哲理を同時に戦略課題とし、実行して、はじめて繁栄発展が起こる。二つのうち、どちらかのーつが欠けても事業の繁栄発展はあり得ない。

『成長拡大』とは、どんなに経済環境が悪化していても、前年よりもお客様の数を増やすことだ。前年よりも売価の高いもの、粗利益の高い新製品を開発し、お客様に新鮮な驚きを与え、数多く買って頂くことである。これ以外の成長拡大はあり得ない。私達はお客様を増やすために、新規訪問をくり返し、商品説明会を行い、ニミニマリン会で来社願い、同業他社の製品を、サービスを調べ、我社の製品のサービス向上努め、お客様が感動する新製品を開発し、改善をくり返して生産効率を上げ、他社と全ゆる方向で優位の差別化を目指さなければ拡大できない。
 『安定』とは、自分の会社で売っているものが、商品であっても、サービスであっても、形があっても無くても、その売りものを、同じお客様が、くり返し、くり返し、くり返し買っていただくことである。これ以外の安定はない。だからこそ、私達は徹底的にお客様第一主義を貫き、定期訪問を欠かさず、人間性を可愛がって頂き、品質を高め、正確な納品に努め、同じお客様が、くり返し、くり返し、くり返し発注される要素を、他社よりはるかに秀でたものにすることこそが、私達に課せられた安定の大テーマである。

 動物園という時代から取り残されたテーマパークで命を懸ける人達がいる。日本最北の動物園、旭山動物園(旭川市、小菅正夫園長)が昨年7~8月の入場者数で上野動物園を抜き、日本一となった。・・・・・・特別珍しい動物がいるわけではないが、陸海空の生き物が施設内を縦横無尽に動き回る姿は、来園者を魅了してやまない。......オットセイが水深6メートルの大型水槽につながったアクリル円柱を観客の眼前で何度も上下に泳ぎ回る。北極グマのすぐそばにつき出た地下のカプセルから観察出来る設備は3O分待ち。オランウータンの空中運動場、さる山のガラス窓に塗られたハチミツをなめる猿の手のひら、犬歯の観察。頭上2.6メートルのネットに横たわるヒョウ。もうじゅう館、ペンギン館など予算がないから全べては手作り。そして年間来場数は120万人を突破する勢いだ」
「続き物で100巻を迎える小説がある。作家の栗本薫さんが1979年から25年間書き続けている小説「グイン・サーガ」で累計2、750万部売れた。魔法にかかったようなロングセラーだ。一時は年1巻ということもあったが、ここ6年ほどは年6、7巻のペースを維持している。『1冊500円台という手ごろな価格にこのハイペースで新刊を出し続けているから固定読者が離れない』。......主人公の戦士、グインは政治力と戦闘力では右に出る者がいない。舞台はこの地球と似た惑星だが、ある時は砂漠で戦争をしていたと思えば、いきなり宮廷で恋物語が始まる。登場人物はギリシャ神話を彷彿させる華やかな顔ぶれ。黒髪の美青年イシュトヴァーン、その彼に心を寄せる絶世の美女、リンダ・アルディア・ジュイナ。『最近、自分はテーマパークを作っているのだと気づきました。〈グイン・サーガ》という1つの世界で、冒険の国もあればロマンスの国もある。......80巻のあたりでいったん物語が収束しかけたのですが、そのあとまた新しい展開が始まってしまいました。結局、本当に完結するのは150巻くらいではないかと今は思っています。』

 手元に平成5年12月15日発行の社内報の私の文章がある。
 「今年の売上見込みは、約45億円です。3ヶ年計画(平成3年~平成5年)がスタートする前年の売上が40億77百万円でしたから3年間の伸び率は110%強です。バブルが崩壊し、日本経済がかつて経験したことがない不況下とはいえ、この数字は不満足なものです。原因は、外部的なものと内部的なものの2種類あります。
外部要因は①最大の販売ルートである喫茶店数が激減し、1店当りの売上げも減少している。②最大の売上げであるマーガリン市場が沈滞している。③学給マーガリンの減少に底打ちがなく現在も毎年10%前後ダウンしている。内部要因は①販売ルートの多角化が遅れセールス活動が従来店フォローを脱皮出来ない。②業務用新製品開発が全くない。②製品、人間関係へのこだわりが希薄で、製品、サービスを徹底的に磨き上げることが出来ていない。などが主なものです。」

「人間は誰でも、本来、何事をも、自分が深<思い、考えた通りに成すことが出来る。自分がもし出来ないと思えば何事も出来ないし、出来ると信念すれば、何事もなすことが出来る。つまり、すべてが、自分が自分自身に課した信念のとおりになる」
(中村天風「成功の実現」)

私達は、宇宙の悠久の歴史の中で、全くの偶然に、運命の悪戯から、同時代に生まれ、マリンフードに働いている。食品産業に従事している。

 私達の携っている食品事業は、バブル経済はもとより、家電、電子業界や情報、通信、自動車、アパレル、住宅産業と比べても、限りなく地道でローテク、保守的な産業だ。おふくろの味つけを好む性向は、かつて食べたことのない食品の出現を阻み、ファッションや趣味に比べて、生涯最も変わることのない嗜好性だと言われている。しかし、ひとたびお客様に我社の商品を注文していただければ、それを縁に何回でも幾年も変わらぬお取引をして頂ける。実に恵まれた事業でもある。
 環境の激変に耐え、激しい競争に生き残り、目標にチャレンジし、売上や利益が順調であり続ける事ほど企業やその社員にとって幸福なことはない。そんな会社を、未来につながるナイスカンパニー、エクセレントカンパニーを創り上げることが出来れば、その原動力となることが出来れば、偶然に入った会社、偶然に出会った運命の中で、一回きりの私達の人生が、どんなに輝いたものになるだろう。

 今年で事業発展計画発表会は19回を数える。この間の成果は、まるで遅々とだらだら坂を登る歩みであった。
 昨年夏、日本経営合理化協会が主催する恒例の3日間にわたる1,000人規模のセミナーで、敬愛する牟田理事長の冒頭の基調講演で「マリンフードの吉村社長の事業計画書のグランドデザインは素晴しい」と過分な言葉を頂戴し激励していただいた。

 私は今再び、精魂こめて、お客様に対する考え方、あらゆるサービスの姿勢、心、信念する経営思想を書く。全社員とその家族が、気力を漲らせ、豊かで、明るい生活を営むために遂行しなければならない必達の利益が明示してあり、それを実現するすべての戦略、方針、構想、実行手段が網羅されている。
 私は大いなる願望(マリンドリーム)達成に向い、ひたすら精進し、方向を決定し、理念を固め、誠意をもって、情熱あふれる経営を推進することを、天から課せられた使命だと考え、実行する。

平成17年1月29日
取締役社長 吉村直樹