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飛天

平成21年 「魔術師(混沌からの誕生)」

- 飛  天 -

(平成21年度事業発展計画書より)
魔術師

「福島智は闇と沈黙の世界に最初から生まれた訳ではなかった。それは彼にゆっくりと忍び寄ってきたのである。3歳のとき、彼は眼炎によって右目の視力を失い、9歳の時には緑内障のために左目の視力を失った。数年後、福島は戦慄すべきことに、自分の耳が聞こえにくくなっていることに気付いた。彼の愛していた音楽の旋律が少しずつ消えていった。18歳の時、彼は全く耳が聞こえなくなった。

 底知れぬ孤独のなかに置き去りにされ、福島は全ての希望を失っても不思議ではなかった。しかし彼の精神力は逆に強くなった。『私は特定の宗教的な信仰を持っているわけではありません。』と彼は言う。『しかし、私は自分の存在を特別なものだと思っています。私には果たすべき役割が与えられているのでしょう。』
 彼は華麗な業績をこれまでに達成してきた。1987年に彼は盲聾者として日本で初めて大学を卒業し、障害を持つ子供の教育に関しての学位をとった。2年前、福島はまた別の壁を打ち破った。38歳にして、日本の最も一流の高等教育機関である東京大学において盲聾者として初めての教授となったのである。その道のりの中で、彼はエッセイや思い出を集めた秀作、『渡辺荘の宇宙人』を含む多くの著作を世に送り出してきた。今日、福島はハンディキャップをもつ人々が直面する様々な困難を除去することをその主要課題とする東京大学の研究室を指導している。

 歴史的にみても障害のある人々を隅に追いやってきたこの国で、障害者の権利のために戦う日本の最も大胆な運動家の一人としての福島の経歴は、偏見を打ち倒すのに役立ってきた。しかし彼は自分が成功するのを助けるために他の人々が支払った犠牲を思い、謙虚そのものである。彼の母親は、彼が聴力を失った時、今ではブライレ方式として知られる手法(指先でトントンたたいて会話する方法)を編み出し、彼を絶望から引っ張りあげた。大学ではブライレ方式の翻訳者のボランティアチームが、彼が講義を理解するのを助けた。

 福島は一つの大きな目標を達成しなければ、と語る、それは、アメリカにある盲聾者のためのヘレンケラー国立センター(盲聾者のために先駆的な教育、研究、職業、リハビリを提供する施設)と同じものを日本にもつくることである。彼はそれは盲聾者という、特別の才能を与えられたものの使命だと考えている。『私は逃げることはできない。今この瞬間、私と入れ替わってくれる人は他に誰もいないのだから。だから、私は自分の役割を果たし続けるだけである。』

(TIME誌2003年4月28日号「アジアの英雄」)

 400年前のスペインの作家セルバンテスが書いた『ドン・キホーテ』という作品がある。痩馬にまたがり、騎士道を信じ、風車に向って突進するドン・キホーテの物語が語り伝えられるのは、その夢が非常識なものであるにもかかわらず、あくまで美しいからである。600年前、世阿弥は『花伝の書』を著わし、「舞は能を源としているが、その舞には花がなければならない」と伝えている。6代目尾上菊五郎は、生涯踊り続けた人生の最後に及んでなお、「まだ足りぬ、踊り続けてあの世まで」と辞世の句を読んだ。

 「月を見たことがある。満月だった。夏の夜、金色の光輝を放つ円盤は、やけに明るく感じられた。
・・・・・・宇宙空間を実感したことがある。それも、地球の『夜の側』の空間のような、ほとんど光のささない真空の世界を。
『光』と『音』を失った高校生のころ、私はいきなり自分が地球上から引きはがされ、この空間に投げ込まれたように感じた。自分ひとりが空間の全てを覆い尽くしてしまうような、狭くて暗く静かな『世界』。
・・・・・・美しい言葉に出会ったことがある。全盲ろうの状態になって失意のうちに学友のもとに戻ったとき、一人の友人が私の手のひらに指先で書いてくれた。
 『しさくは きみの ために ある』。
・・・・・・あれから20年の時が流れた。私の手の上を、この間実に多くの『言葉』が通り過ぎていった。指点字や手のひらへの文字で直接語りかけた人、通訳者を通して言葉を交わした相手・・・・・・
・・・・・・『光』が認識につながり、『音』が感情につながるとすれば、『言葉』は魂と結びつく働きをするのだと思う。私が幽閉された『暗黒の真空』から私を解放してくれたものが言葉であり、私の魂に命を吹き込んでくれたものも『言葉』だった。
 私は今、『言葉』によって組み立てられたさまざまな概念と、多様で複雑な現実の諸事象との相互作用のなかに生まれる、新たな思想と知の世界をくみ上げていく仕事に就いている。おそらく、これは何者かが意図した一つの流れに沿う生き方なのだと思っている。」

(福島智・東京大学教授)

 事業の繁栄発展の究極は、たった二つのコンセプトから成り立っている。
 一つは成長拡大させること。もう一つは安定させることである。この二つの哲理を同時に戦略課題として、実行して、はじめて繁栄発展が起こる。二つのうち、どちらかの一つが欠けても事業の繁栄発展はありえない。

 『成長拡大』とは、どんなに経済環境が悪化していても、前年よりもお客様の数を増やすことだ。お客様に新鮮な驚きを与え、数多く買って頂くことである。これ以外の成長拡大はあり得ない。私たちはお客様を増やすために、新規訪問をくり返し、商品説明会を行い、ミニマリン会で来社願い、同業他社の製品を、サービスを調べ、我社の製品のサービス向上に努め、お客様が感動する新製品を開発し、改善を繰り返して生産効率を上げ、他社と全ゆる方向で優位の差別化を目指さなければ拡大できない。
 『安定』とは、自分の会社で売っているものが、商品であっても、サービスであっても、形があっても無くても、その売りものを、同じお客様が、くり返し、くり返し、くり返し発注される要素を、他社よりはるかに秀でたものにすることこそが、私たちに課せられた安定の大テーマである。

 「『シルク・ドウ・ソレイユ』それはフランス語で『太陽のサーカス』を意味します。
・・・・・・世界210都市で公演、累計7,000万人以上の動員実績を誇るサーカス集団。昨年10月1日、日本初の専用劇場が千葉県浦安市にオープンした。急成長の陰には、ショービジネスに徹した必勝の事業モデルがある。・・・・・・その歴史は、1984年に創設者ギー・ラリベルティのもとに集まった73名のスタッフと、ストリートパフォーマーから始まりました。それが今ではアーティスト1,000名を含む40ヵ国の国籍をもつ総勢4,000名を越えるカンパニーにまで成長。人間の肉体を極限まで使ったパフォーマンスと演技、演出・音楽・衣装・証明・舞台、すべてにおいてクオリティの高い芸術的なエンターテイメントを生み出し数々の賞を受賞しています。
・・・・・・日々生まれてくる様々なアイデアを、作品に落とし込めるかどうかを判断するのは、創業メンバーであるラリベルテ氏とサンクロワ氏。『どんな作品が良いかを検討し、誰がディレクターなら作品の世界を再現してくれるかを判断する』。作品へのこだわりは徹底しており、演者の衣装、靴、カツラ、化粧はすべてモントリオールにある自前の工房で製作。そのための専門職人を、400人以上社員として抱えている。
『人々に希望を配達すること、それは人でしか成しえない。極限まで突き詰めたアクロバティックな表現を演劇、バレエなど様々な文化を融合させて、芸術の域に高めることをめざしているのである。・・・・・・共通する言語を持たなくても、郷土性などを演出しなくても、世界中の人々の感情に訴えかけ、驚き、超越感、言い表せないほどの美、鼓動がとまるような思いといったボーダレスな感動をもたらすのです』」。

(HP及び日経ビジネス誌)

「『社長になってからの29年は、人材教育との戦いだった』と振り返る吉村社長が23年間続けている新入社員研修がユニークだ。全新入社員と社長だけで行う3日間の合宿の間、新入社員は社長が提示するテーマに従ってひたすらレポートを書き続ける。・・・・・・『この3日間で、彼らの人となりの全てを把握できる。新人を鍛えながら交流が図れ、社長自身が人事の全てを掌握している状態が作れる。一石三鳥の合宿なのです』。・・・・・・食品偽装、毒物混入など業界自体が揺れに揺れる中、食品メーカーの経営者として『まるで戦場を歩く兵士の気分』と緊張感も漂わせる。・・・・・・『社長業は総合政策業。現場は工学系、研究は理化学系、社員に対しては心理学系、飲み会では体育会系、お客様には文科系や芸術系の表現やコミュニケーションが必要で知力を総動員して取組んでいます。食が喉を通らない程悩み深い場面は山のようにありますが、しかし総体として、とても魅力的な仕事だと思っています』」。(「年輪」No.134)

「人間は誰でも、本来、何事をも、自分が深く思い、考えた通りに成すことが出来る。自分がもし出来ないと思えば何事も出来ないし、出来ると信念すれば、何事もなすことが出来る。つまり、すべてが、自分が自分自身に課した信念のとおりになる」

(中村天風「成功の現実」)

 私たちの携っている食品事業は、バブル経済はもとより、家電、電子業界や情報、通信、自動車、アパレル、住宅産業と比べても、限りなく地道でローテク、保守的な産業だ。おふくろの味つけを好む性向は、かって食べたことのない食品の出現を阻み、ファッションや趣味に比べて、生涯最も変わることのない嗜好性だと言われている。しかし、ひとたびお客様に我社の商品を注文していただければ、それを縁に何回でも幾年も変わらぬお取引をして頂ける。実に恵まれた事業でもある。
 環境の激変に耐え、激しい競争に生き残り、目標にチャレンジし、売上や利益が順調であり続ける事ほど企業やその社員にとって幸福なことはない。そんな会社を、未来につながるナイスカンパニー、エクセレントカンパニーを創り上げることが出来れば、その原動力となることが出来れば、偶然に入った会社、偶然に出会った運命の中で、一回きりの私達の人生が、どんなに輝いたものになるだろう。

 今年で事業発展計画発表会は23回を数える。この間の成果はまるで遅々とだらだら坂を登る歩みであった。私の好きな言葉「都会の牛」のように。

 私は今再び、精魂こめて、お客様に対する考え方、あらゆるサービスの姿勢、心、信念する経営思想を書く。全社員とその家族が、気力を漲らせ、豊かで、明るい生活を営むために遂行しなければならない必達の利益が明示してあり、それを実現するすべての戦略、方針、構想、実行手段が網羅されている。
 私は大いなる願望(マリンドリーム)達成に向い、ひたすら精進し、方向を決定し、理念を固め、誠意をもって情熱あふれる経営を推進することを、天から課せられた使命だと考え、実行する。


平成21年1月31日
取締役社長 吉村直樹