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飛天

平成3年 「激水の疾くして、石を漂わすに至るものは、勢いなり」

- 飛  天 -
(平成3年事業発展計画書より)

 天人、天衆の飛行形のもので、古くから絵画、彫刻に表現されて仏堂の荘厳に用いられている。西方系は、裸体中心の表現で、東方系は装飾的な天衣の表現。美しく、自由に宙を行く意に用いられる。最近では、平成2年1月24日に発射された、日本で初めての、月と地球を回る国産科学実験衛星「ミューゼスA」にこの名が命名された。

 事業の繁栄発展の究極は、たつた二つのコンセプトから成立っている。
 一つは成長拡大させるさせること。もう一つは、安定させることである。この二つの哲理を同時に戦略課題とし、実行して、はじめて繁栄発展が起こる。二つのうち、どちらかの一つが欠けても事業の永遠の繁栄発展はあり得ない。

 私達は全くの偶然に、運命の悪戯から、同時代に生まれ、マリンフードに働いている。食品産業に従事している。
 食品事業は、特に業務用の食品事業は、バブル経済はもとより、家電・電子業界や自動車、住宅産業と比べても、限りなく地道で保守的な産業だ。
 おふくろの味つけを好む性向は、かつて食べたことのない食品の出現を阻み、ファッションや趣味に比べて、生涯変わることの最も少ない嗜好性と言われている。年間に2万とも3万とも言われる食品メーカーの新商品のうち、生き残ることが出来るものは100に満たない。「スーパードライ」や「一番搾り」が奇跡と呼ばれる由縁です。
 しかし、ひとたびお客様に我社の商品を注文していただければ、それを縁に、何回も、幾年も変らぬお取引きをして頂ける。実に恵まれた事業でもある。
 お客様との長い信頼関係を、われわれの努力で築いていける。五年でも、十年でも、五十年でも、百年でも、限りない長い信頼関係を築いていけるのである。

 だからこそ、我社にとって、長く信頼して頂ける新しいお客様を開拓することは、最重要な課題だ。
 しかし、お客様の開拓は簡単にはいかない。お客様はなかなかチャンスをくれない。数少ないチャンスを根気よく待って活かすことが大切だ。一度や二度の訪間で断わられても当り前だ。百年も続く得意先を、一、二度の訪間で取れることこそ幸運なのである。
 この重要な新規開拓のために、われわれは全営業力を投入し、生産体勢のすべてを顧客志向にしなければならない。全社員が、いつも、いつも研鑽しながら、他社を意識し、競争相手よりも良い物、新しい物、優っているものを武器にして新しい顧客を獲得すべきだ。
 そして、われわれはお客様のニーズに合わせて、営業の体勢、会社の体勢を整え、設備を整え、クレームを撲滅し、味の改良を繰り返し、より完璧な食品を届けるよう努めなければならない。
 全社員とその家族の、長い将来にわたる豊かな生活、事業の永遠の発展は、新しいお客様の開拓いかんにかかっている。

「安定」とは、自分の会社で売っているものが何であっても、商品であっても、サービスであっても、形があっても無くても、その売りものを、同じお客様が、くり返し、くり返し、くり返し買ってくれることである。
 だからこそ、私たちは、徹底的にお客様第一主義を貫き、何度も何度もお客様訪間をくり返し、人間性を可愛がって頂き、品質を高め、同行訪間を行い、お客様の会社の売上げに寄与する新製品を開発しなければならない。
 同じお客様が、いつまでも、くり返しくり返し発注される全ゆる要素を、他社よりはるかに秀れたものにすることこそが、私達に課せられた大テーマである。

「荘子」の中に次のような話がある。
 闘鶏の調教訓練の名人が、王から頼まれ闘鶏をあずかりました。10日ほどたって王が「もうよいか」とたずねると名人は「いやいけません。から威張りして客気満満で、こんなことではまだまだだめです」という。10日後にまたたずねた。「まだだめです。相手の姿を見たり、声を聞いたりすると興奮するところがあります。」
 さらに10日たってたずねると、「まだだめです。相手を見ると、なにをこいつ!というようににらみつけて、大いに気勢をあげるところがある」と答える。その10日後に王は再びたずねました。「そうすると名人は初めて「まあ、どうにかよろしいでしょう。ほかの鶏が挑んできても、平生と少しも変らない。ちょっとみると木で彫った鶏そっくりです。徳が充実しました。もう、どんな相手でも、これに応戦するものはありますまい。敵は見ただけで逃げてしまうでしょう。

 私達は、私達の全ての売り物を、もっと、もっと徹底的に磨き上げることだ。
「マリンフードの商品は素晴らしい」「マリンフードの営業マンは実に愉快だ」「ぜひマリンフードと商売をやりたい」「うちの子供をマリンフードに入れたい」と言われる会社を創り上げることが出来れば、偶然に入った会社、偶然に出会った運命の中で、一回きりの私達の人生が、どんなに輝いたものになるだろう。

 私達は、永遠に成長拡大と安定を戦略課題とし、競争相手と差別化した売り物をお客様に提供し続けることを、繁栄発展の動かせない哲理としていなければならない。
 私は、全社員とその家族が、豊かで明るい生活を営むために、ひたすら精進し、方向を決定し、理念を固め、私心を捨て、あらゆる困難に立ちむかい、情熱あふれる経営を推進することを、天から課せられた使命だと考え、実行する。

平成3年1月25日
取締役社長 吉村直樹