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飛天

平成31年 妖精~神の使い、或いは自然の精霊~


飛天

「『2018年の世相』
 常識に竿さすアメリカの政治が賑々しく、経済もダイナミックだ。『国家の品格』とは無縁でも、中間選挙の投票率は活気に溢れた。昨年、一人の帝王が世界を席巻した。漢字を選べば『札(トランプ)』。我が国は、人口減少に施策なく、起業家の数も少ない。科学技術や教育への投資も見劣りする。いや井上尚弥、大谷翔平は素晴らしい。

『2019 年の漢字』
 今年、もっと深く世界を知る冒険心が必要かもしれない。小中学校時代の世界少年少女 文学全集の冒頭の言葉に『夢と知識と幸福への道しるべに、深く美しい世界の国々から集めた宝の倉』とある。繰り返し読んだ物語『スイスのロビンソン』の最後の言葉。『皆さん勉強しなさい。知ることは力です。知ることは解放されることです。』」
(とよなかチャンバー 2019年1月号)


拝啓
 今年マリンフードは創業130年を迎えました。長崎出身の祖父又作が、明治21年(1888年)30歳で東京牛込の地で石鹸工場を創業したのが始まりです。
 わが社の創業前のルーツは、それから100年以前に遡ります。ぼくの5代先祖に長崎長州藩屋敷御用達で、漢詩人でもあった吉村迂斎(1749年~1805年)がいます。
 江戸時代中後期、詩結社同聲社を率い長崎詩壇の後頸(かなめ)と目された人です。
 父栄吉が発掘したのですが、迂斎に776編の漢詩が残されています。

 『読書』
   白頭猶下読書帷  しらが頭で読書に耽っている。
   剽窃陳篇費苦思  陳腐な駄文に悩まされている。
   愧我不如朽腐草  まるで朽ちた草が、螢となって、
   化為螢火幻神奇  怪しげに光っているようだ。

 『春』
   韶景中      春ののどかな景色の中に、
   枝枝幾点紅    あの枝この枝に幾つかの紅が見える。
   摘来香満袖    摘み取って来ると、袖に香りが満ちている。
   意末窮      心はまだ癒えぬが、
   更憐花裏双胡蝶  花のかげに二羽の蝶の、
   舞春風      春風に舞うのが愛らしい。

 ぼくの先祖ながら、そのみずみずしいロマンチシズムや自嘲の精神に驚きます。
敬具
 (平成30年春の「社長挨拶文」より)


拝啓
 今年のGWに2泊4日の弾丸ツアーで米国オマハ市を訪問しました。世界一の投資家で知られるウオーレン・バフェット率いるバークシャーハザウェーの株主総会です。
 投資家として、バフェットはオマハの賢人と呼ばれ、巨大な資産を築き上げ、株主総会で株主との5時間に渡る質疑応答を続け、個人資産の85%は寄付を公表しています。史上空前の寄付活動ですが、生き様は古今の思想家を超えています。
 バフェットの登場は午前9時半でした。中央ステージに2席あり、一方は生涯の相棒チャーリー・マンガーです。客席の最前列にビル・ゲイツもいます。今年バフェットは87 歳、マンガー 94 歳です。一度伝説の株主総会を見ておこう、と言う訳でした。
 二人は事前に質問を知らないのですが、間髪を入れずバフェットが答えます。最後に、チャーリーと声をかけられて、マンガーが一言コメントを発して会場が湧きます。
 一番興味深い質問は『全ての投資案件はお二人の決定事項ですが、今後若い人達の決定参加については如何ですか』でした。
 バフェット王国を象徴する質問でした。
敬具
 (平成30年夏の「社長挨拶文」より)


「人間は誰でも本来、何事をも、自分が深く思い考えた通りに成すことが出来る。自分がもし出来ないと思えば何事も出来ないし、出来ると信念すれば、何事をもなすことが出来る。つまり、すべてが、自分が自分自身に課した信念のとおりになる。」
(中村天風「成功の実現」より)


『創業130 年、大方針は①核事業に集中②スピード③顧客第一主義④現地現場主義』
『2代にわたり独立して起業』

 創業者の又作は、長崎や上海などで化学技術を学んだ。その後、上京して独立し、吉村石鹸工場を設立した。又作は、技術の向上に執念を燃やした。米国宣教師のスタウト、上海初代総領事の品川忠道、東京大学教授の山岡次郎氏や日本の工業化学の元老、高松豊吉博士などに知遇を得、全国の織物産地の舶来万能の固定観念を打破し、当時人気のフランス製のマルセール石鹸は不必要になり、急速に輸入終息に向かった。
 明治31年第7回内国国益品博覧会で金賞、36年第5回内国勧業博覧会で2等賞、38年日露戦争凱旋記念内国生産品博覧会で金賞銀賞、45年東京府知事より桐花御紋木杯を下賜、大正3年東京大正博覧会で銀賞、6年第1回化学工業博覧会で金賞など各種博覧会、展覧会などに出れば必ず受賞し、国内各機業地でその名を知らない者はないほどであった。
 下野日々新聞が又作の記事を書く。「資性不撓不屈、業に熱心でその発明製造力が、わが足利織物生産に甚大な利益を寄与せし事は、本県産業上の恩人と言ってよい。」
 文学を目指していた又作の5男栄吉は、昭和23 年に石鹸同様に油を使うマーガリンの製造を初め、『ミルクマリン』のブランドで販売も開始した。
 昭和32年、栄吉は大阪府豊中市にミルクマリン㈱を創立し工場を建てた。
 『なりゆきで独立したものの、父は文学畑出身でしたから、社長業の傍ら同人雑誌に寄稿したり、日本古代史について講演したりしていました。会社の業績はずっと悪戦苦闘が続いていました。』(直樹談)
 昭和55年栄吉社長が病没し、直樹が社長に就任。しかし事業は停滞。その中から事業計画書の作成が初まる。新たな出発となった。以来30年以上事業計画を毎年つくり長期と短期の視点で会社が動いて来た。
 『社長に就任してなんとか売り上げは10倍まで来ましたが、毎年が戦場を歩く兵士の気分です。どこから弾が飛んで来るか分からないし、いつ地雷を踏むかも分からない。しかし、怖がっていては仕事にならない。』
 『今は売り上げの7割がチーズです。新製品づくりに積極的に取り組み、年に200品内外発表してます。売り上げの60%強は過去5年以内に発売した新製品です。最近の売れ筋はチーズ代替品〔スティリーノ〕や、全ゆる料理に使える〔クッキングモッツァレラ〕など。今後の開発は、やはりチーズ関連が多くなっていくでしょう。世界のチーズ市場は年2000万トンを越えて、まだまだ伸び続けています。』
 『他に営業は全セールスが毎月170軒の顧客訪問を実行し、年間150社のお客様を工場に招き、種々の議論をしています。各工場部門とのプロジェクトも2週間に1回開催し、年に1000件以上ある改善提案は1ヶ月に1回の専任ユニットPJで処理しています。』
 『どんな将来が待っているか分からないが、わくわくしながら走りたい』。人や形を変えながら続いてきたマリンフードは『事業計画』を羅針盤として、世代を超えて日々変化成長を目指している。」
(『石垣』2018年12月号より)


 400年前のスペインの作家セルバンティスが書いた『ドン・キホーテ』という作品がある。痩馬にまたがり、騎士道を信じ、風車に向って突進するドン・キホーテの物語が語り伝えられるのは、その夢が非常識なものであるにもかかわらず、あくまで美しいからである。600年前、世阿弥は『花伝の書』を著わし「舞は能を源としているが、その舞には花がなければならない」と伝えている。6代目尾上菊五郎は、生涯踊り続けた人生の最後に及んでなお「まだ足りぬ、踊り踊りてあの世まで」と辞世の句を読んだ。

 私達の携わっている食品ビジネスは、バブル経済はもとより、家電、電子業界や、情報、通信、自動車、アパレル、住宅産業と比べても、限りなく地道でローテク、保守的な産業です。おふくろの味つけを好む性向は、かつて食べたことのない食品の出現を阻み、ファッションや趣味に比べて、生涯最も変わることのない嗜好性だと言われている。しかしひとたびお客様に我社の商品を注文していただければ、それを縁に何回でも幾年も変わらぬお取り引きをして頂ける。
 更に、私は食品ほど可能性に溢れた仕事もまた、他に類を見ないと信じます。日本の食品関連の市場規模は100兆円です。自動車が10兆円。住宅産業で25 兆円です。ダントツに食品業界の規模は大きいのです。世界に目を転じると、約1500兆円。これが2050年になると3000兆円になると推定されています。目の眩む規模です。我々全てに無限の可能性が秘められています。
 私達は、宇宙の悠久の歴史の中で、運命の悪戯から、同時代に生まれ、マリンフードで働いています。
 しかし、状況は必ずしも楽天的ではありません。この環境の激変に耐え、激しい競争に生き残り、目標にチャレンジし、売上や利益が順調であり続ける事ほど企業やその社員にとって幸福なことはない。そんな会社を、未来につながるナイスカンパニー、エクセレントカンパニーを創り上げることが出来れば、その原動力となることが出来れば、偶然に入った会社、偶然に出会った運命の中で、一回きりの私達の人生が、どんなに輝いたものになるだろう。

 今日もHPにお客様からのメールが届きます。
「モニターに参加して一緒に踊って楽しく過ごせた1年はとても有意義な時間でした。最近スティリーノにはまっています。これからも応援しています。」
「たらこスプレッドと燻製バターでマリンフードさんの虜になりました。最近近所のスーパーで取り扱いが始まり、ケチらずに惜しみなく使っています。」
「総集編の動画、本当に素晴らしくて、頑張っているお姿には感動し、失敗しているNG 場面には笑いながら拝見しています。『ドランクドラゴンのバカ売れ研究所』も拝見しました。嬉しさと誇らしい気持ちでいっぱいになりました。」
「モッツァレラチーズにハマっています。めちゃめちゃ近くに工場があり、びっくりしてホームページを確認しました!ふれあいセールでヴィーガンホットケーキを見つけ購入! 味も美味しく、リピート確定です。」

 今年で事業発展計画発表会は33回を数える。この間の成果は、まるで遅々とだらだら坂を登る歩みであった。そして、今年、平成が終わり新しい元号がスタートする。更には第Ⅲ期新20年長期事業計画を作成し、「妖精~神の使い、或いは自然の精霊~」という新しい標語を押し立てて船出した。

 私は大いなる願望(マリンドリーム)達成に向い、ひたすら精進し、方向を決定し、理念を固め、誠意をもって、情熱あふれる経営を推進することを、天から課せられた使命だと考え、実行する。


  平成31年1月26日
取締役社長 吉村直樹