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飛天

平成5年 「守・破・離」

- 飛  天 -
(平成5年事業発展計画書より)

「......私の一日は午前四時に始まる。起床して身じたくを整えると、自坊端応院で朝のお勤めに入り、このとき欠かさず心に浮かべるのが『六念』である。
 威儀を正して礼をしたら、まずきのうの自分を思い返し、反省すべき点はないか考えてみる。次いで今日の予定を思い起こし、何か忘れてはいないか心に照らして、さらに仕事の上でやましいことがないか、恥ずべきところはないかを顧みる。四番目は家庭生活に無駄がないか、五番目に家族みなが円満にいっているか、そう考えをめぐらしたうえで、どうか今日も皆とともに無事に仕事ができますようにとお願いする。......たったこれだけのことである。ともかく毎日つづけてごらんなさい。大切なことはつづけること。坊さんの修行も行きつくところ、このつづけることにほかならない。
『明らけく 後の仏のみ世までも 光り伝えよ 法のともしび』
 修行のため十九歳で比叡山に入られた伝教大師最澄は延暦七年、深い森を開いてお堂を建て、自ら彫った薬師如来像を祀られた。その折、お灯明をかかげながら詠まれたのがこの歌である。『光つたえよ』とはすなわち『つづけよ』ということ。山居八十余年、私がしてきたのもこのつづけることであり、ただ永く続くことこそ、比叡山のあり方と信じてきた。......数えで九十九を迎える明日も、私はそうありたいと思う。」(天台座主 山田恵諦師)


 事業の繁栄発展の究極は、たつた二つのコンセプトから成り立っている。
 一つは成長拡大させること。もう一つは、安定させることである。この二つの哲理を同時に戦略課題とし、実行して、はじめて繁栄発展が起こる。二つのうち、どちらかの一つが欠けても事業の永遠の繁栄発展はあり得ない。
 昨年12月東京地区百貨店売上高は昨年同月比11.2%減となり全品目で前年を下回り1965年に統計を取り始めて以来最大のマイナス幅となった。昨年一年間の売上高も前年比5.7%減と落ち込んだが、これはオイルショックでも経験したことのない初めての前年割れで、バブル崩壊が日本経済を全面不況に引っぱり込んだ。過去経験したことのない複合不況の大きな津波が、我々に襲いかかってきた。
 しかし、この厳しい経営環境の中にあっても意気揚々、隆盛の勢いで成長発展している企業は無数にある。1万9千円の腕時計型血圧計を昨年1年間で50万個も売ったカシオ電機、シートー枚でホワイトカラーの生産性を2倍上げ売上高を1年で3倍上げた我社のお客様レストランチェーンのサンマルク。ファミコン用ソフトを半年間で500万本も売ったカプコン。
 グリコ・森永事件から8年、ポッキーで快進撃の江崎グリコもその一社だ。昨年度の冷菓(アイスクリーム)事業部門の売り上げは業界平均2.8%に対し14.8%増でシェア第4位から1位に躍り出た。売上高の6割を占める菓子部門はなんと22.5%増で、全売上高は前年同期比19.2%増の1,664億円で営業利益は81億円(前年比77.1%増)を記録した。「グリコは商品アイテム数は少ないが、一つとして無駄な商品がない」ロッテ、森永製菓の菓子の商品アイテム数400、明治製菓230に対し江崎グリコは120。「年商最低25億円を見込めなければ発売には踏み切らない。発売する以上は徹底して拡販を図る。」そして生産機械まで自社で独自に開発する。
 江崎グリコは1964年に大構造改革を実施している。58年頃まで商品は「グリコ」「アーモンドグリコ」「ビスコ」「アーモンドチョコンート」のたった4品が中心だったが、その後コーラやチーズなど商品数が149品目にまで急増し、経営が一気に悪化した。そして64年故江崎利一氏が商品を28品目に絞り込むという大構造改革を実施して、経営危機を切り抜けた。しかし、今度は84年に江崎勝久社長の誘拐事件で始まったグリコ・森永事件で、売り上げは2割も落ち込み、営業損益は赤字に転落した。その後3年かけて売上げを回復させたが、基幹商品のポッキーは前期比90%の状況が続き、人件費、物流費が高騰し、利益率が悪化するという新たな苦難を迎えた。「新たな事業を展開するには膨大なエネルギーが必要になるから、あの状況を打開するにはポッキーの高付加価値化しかなかった」 高付加価値化第1弾の88年発売した「アーモンドクラッシュポッキー」は従来のポッキーにアーモンドの粒を吹き付け、さらに再びチョコレートをかぶせるという凝った商品で、メーカー希望小売価格は300円で従来品の2倍だが3年後、年商85億円の商品に育った。89年に発売した「つぶつぶいちご」は女子中高生が対象で乾燥イチゴ果肉をまぶした。北海道でテスト販売後近畿、中部地区にエリアを拡げ2年で30億円を突破したが、まだ首都圏には投入していない。今首都圏の若い女性に最も人気のあるおみやげは「つぶつぶいちごポッキー」なのである。こうして、66年に発売され88年度の売り上げが150億円だった「ポッキー」は、92年には300億円を突破する業界最大の「お化け商品」に成長した。海外戦略も、70年に東南アジア、80年にヨーロッパ(フランス名ミカド)、90年に米国と着々と世界戦略の布石を打ち続けている。

「人間は誰でも、本来、何事をも、自分が深く思い、考えたとおりに成すことができる。自分が、もしできないと思えば何事もできないし、できると信念すれば、何事をもなすことができる。つまり、すべてが自分が自分自身に課した信念のとおりになる」(中村天風「成功の実現」)

 私達は、全くの偶然に、運命の悪戯から、同時代に生まれ、マリンフードに働いている。食品産業に従業している。
 そして、私達は、私達の全ての売物を、もっと、もっと徹底的に磨きあげることが出来るはずです。
 お客様訪問戦略を、お客様に可愛がられるセールス像を、工場の環境整備を、品質の改良、向上を、新製品の開発を。お客様との長い信頼関係を、我々の努力次第で築いていけるはずです6新しいお客様を増していけるはずです。
「マリンフードの商品は素晴しい」「マリンフードの営業マンは実に愉快だ」「ぜひマリンフードと商売をやりたい」「うちの子供をマリンフードに入れたい」と言われる会社を創り上げることが出来れば、偶然に入った会社、偶然に出会った運命の中で、一回きりの私達の人生が、どんなに輝いたものになるだろう。

 私達は、永遠に成長拡大と安定を戦略課題とし、競争相手と差別化した売り物をお客様に提供し続けることを、繁栄発展の動かせない哲理としていなければならない。

 この事業発展計画書は、私が精魂こめて書きあげた、お客様に対する考え方、あらゆるサービスの姿勢、心、信念する経営思想をまとめたものである。全社員とその家族が、豊かで、明るい生活を営むために遂行しなければならない必達の売上、必達の利益が明示してあり、それを実現するすべての戦略、方針、構想、実行手段が網羅されている。
 私は、この必達の売上利益確保のために、お客様第一主義を採り、競争力を強化し、新しい市場開拓を行い、情熱あふれる経営を推進することを、天から課せられた使命だと考え実行する。

平成5年1月30日
取締役社長 吉村直樹