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会頭の履歴書

会頭の履歴書⑤(とよなかチャンバー2026年5月号より転載)

豊中商工会議所会頭 
吉村 直樹
(マリンフード株式会社代表取締役社長)


▲奈良興福寺の仏頭

【父Ⅴ】
 父の古い次の文章がある。「三十才の頃名古屋の町角で売卜者に占ってもらった。実業界に身をおくべきか、文学の世界か。彼は筮竹を動かした末に言った。貴方は両方ともおやりなさい」。
 父は二つの道を貫いた。
 ボクが中学生の頃、休日になると家族で奈良飛鳥の地へ、ドライブで連れて行かれた。二上山や春日山等だ。父は当時62才位。同人誌大阪作家、豊中文学に書き継いで、70才で「飛鳥の悲唱」を出版した。無名の作家だが、永井路子、田辺聖子等の作家から多数のお手紙を頂戴した。東京に住む異母姉が、晩年同好の士と飛鳥を探索していた。僕の長女も、一時住居を奈良に移した。父の血だろうか。
 元号諮問委員で『平成』決定の時、『修文』を提出した九州大学故目加田誠名誉教授は、東大文学部以来の親友だ。栄吉の『飛鳥の悲唱』をNHK大河ドラマに推薦頂いたが、時代考証が困難で果せなかった。
 先生から弔辞を頂いた。
 「正義感が強く、妥協の出来ぬ人であった。情こまやかで思いやりがあった。心持ちを表わすのが照れ臭いのは、都会人であったからかも知れない」。
 父は旧制早稲田中学出身で、在職中の書道家会津八一氏に長く傾倒していた。(続く)

(2026年8月1日付 / 毎月1日発行)