会頭の履歴書⑧(とよなかチャンバー2026年8月号より転載)
豊中商工会議所会頭
吉村 直樹
(マリンフード株式会社代表取締役社長)
▲40年前、母と祖母。
ボクと妹(満智子)が小学生の或る月夜、母(百合子、一時恵津子)に連れられトボトボと歩く姿が目に浮かぶ。
行先は庄内の祖母の家。家出の理由は父の浮気かも知れない。翌日は日曜で、父は所在なく新聞を見ていた。
母は広島県福山市出身。実家は芸者置屋。福山駅から実家まで敷地が続く地主。祖母の入婿は、原因は不明だが大祖母から追い出された。
小学生の頃から日本舞踊を習い、天才少女と呼ばれていた。大阪へ再婚した祖母ハルが大火事で焼け出され、夫君は焼死して一人生活になり母が福山から出てきた。そして高名な踊りの師匠を求めた。事実人間国宝の八代目坂東三津五郎最後の直弟子になった。
僕の長女伊織は大学時代に留学した英国で、母と女優だった妻の血で、突如日本舞踊に出会った。
一方で祖母と母は、大阪市内でカフェーを開いた。
丁度太平洋戦争が始まったばかりで、戦地へ出征する兵士で溢れ返った。持ち金を使い果たしてから戦地へ向かう兵士達の心意気だ。
深夜二人は溢れる紙幣を、どこに隠そうかと額を寄せ合った。後年、祖母はよく株をやった。その時の資産の残りだろう。ただいつも、大半はこの人(母)の踊りに使ったと嘆いた。小柄だが元気な94年の生涯だった。(続く)
(2026年11月1日付 / 毎月1日発行)
